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    「働かないアリに意義がある」

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       一時期評判になった「働かないアリに意義がある」という書物。とても面白く,説得力があり「生物の進化」ということの本質を考えさせられた良書でした。
      働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

      以前から,そのポイントを整理したいと思いつつ,根が好奇心旺盛(移り気?)な“蓼食う虫”のこと,ついつい他にも関心事が多く,機会に恵まれませんでした。ようやく今日,気分が向いたので,書き記(しる)そうと思い立った次第です。

      タイトルは随分“奇抜”ですが,中身はいたってまっとう。著者は,長谷川英祐というれっきとした進化生物学者です。

      アリと言えば,すぐに「アリとキリギリス」を思い出すように,働き者”のイメージが定着している昆虫です。ところが実際は,7割ほどのアリが何もしていない,また1割は一生働かない,ことが実証されたのだという。

      アリの仕事は,エサ集め幼虫や女王の世話巣の修理エサ与え,などですが,7割のアリは,自分の体を舐めたり,目的もなく歩いたり,ただぼーっと動かないでいるなど,およそ労働とは無関係の行動をとっているのだとか。実に“不届き者”?です。笑っちゃいますね。

      「生物進化の大法則」,「厳しい生存競争を生き残れる性質だけが,将来の世代に広まっていく」厳密にいうと“自然淘汰”というふるいにかけられて,適者が生存していく)ということですから,ちょっと考えると,こんな“怠け者”たちがよく生き残ってきたもんだ,と不可解に思ってしまいます。

      しかし,意外や意外!真実は,それだからこそ,アリたちが生き残ってこられたのだという。何故なのか?‥‥。ここが実に面白いところです。
       
      たとえば,卵の世話。巣の中は雑菌でいっぱいですから,働きアリは卵を舐め続け,抗菌物質を塗り続けて卵を守っています。しかし何らかの事故でこの行為が途絶えたら,たちまち卵は全滅,子孫は残りません。また,巣が何者かに襲われて働きアリが激減する危険もあります。働きアリ全員で目一杯働いていたのでは,こんな場面に出くわすと補充がきかない。巣が壊滅してしまう。

      あるいは,アリのエサは常に必要な量が安定的に獲得できるとは限らない。突然思いがけなく大きな獲物が見つかって,急遽大規模な労働力が必要になる,といったことも起きる。そんな時も,余力がないと,大きな獲物を運び込むことができない。

      つまり,生きていく上で予測不可能な事件”がいつ起きるか分からない。そんな現実に直面しても,集団全体が生き残るためには,常にそれに対処できる「集団全体の余力」が必要となる。働かないアリというのは,実は,そのような“予備軍団”なのだというわけ。

      その証拠に,日頃怠けている働きアリたちも,そんな緊急の場面になるとちゃんと出動して,大いに貢献するのだといいます。そして,怠け者のアリというのは,実は,ふだんは「働きたくても働けない」アリのことで,このようなアリたちが存在する方が,集団全体のためには本当は効率がよい,ということなのです。

      じゃ次に,そんな「働き者のアリ」と「怠け者のアリ」がどのようにして区分されていくのか?‥‥。これがまた,実に面白い。

      答えは,個々のアリに,刺激に反応する速度(腰の軽さ)「個体差」があるから。敏感なアリは卵を見るとすぐ舐める動作を開始するが,鈍感なアリはすぐに反応しないので仕事にありつけない,ということ。そしてこの腰の軽さの個体差は「遺伝子」の差に由来し,それは,一匹の女王アリがたくさんの雄アリと交尾することから生ずるのだといいます。納得。

      そうしてもうひとつ。“上司”がいて組織を統率するといった人間の社会と違って,アリの社会では,仕事量に応じて働きアリを動員するなどといった高度な情報伝達・指揮命令系統があるハズがありません。なのに,あの見事に見える“チームワーク”は,いったいどうやって生まれるのか‥‥。これもまた,実に面白いところ。

      それは,反応速度の違いが,腰の軽いものから腰の重いものまでまんべんなく存在するから。高度な知能を持たないアリたちでも,仕事量が増え,自分の反応速度に合った刺激に出合うと,単純に勝手に反応する。それが全体としては,まるで司令官がいるかのように複雑で高度な処理も成し遂げてしまうというわけ。ここで面白いことに「全員の腰が軽くてはダメ」様々な“個性”が混じり合っているからこそ,はじめてうまくいくのです。凄い!

      この他にも,次のような興味ある事実(よく考えると,非常に合理的)が紹介されています。

      ◇アリには一つの仕事をやり抜くことで身に付く“熟練”ということはなく,従っていわゆる「職人」はいない

      ◇若いアリはリスクの小さい内勤,老いるとリスクの伴う外勤(エサ集めなど)を受け持つと全体効率が上がる。

      お馬鹿さんアリがいると効率のよいルートが発見されるので,全体としては効率よくエサを獲ることができる。

      ◇巨大な頭と強力な顎を持つ「兵隊アリ」は戦わない。その理由は,多少のエサを賭けた戦いくらいでは,失うことの損失の方が大きいから。

      ◇ハチやアリにも労があり,「過労死」がある。働いてばかりいるアリの寿命は短く,幼虫の成長による働き手の補充が間に合わないと,その集団は壊滅する。つまり,みんなが疲れると社会は続かないということ。

      このように,アリの生態を研究する中で見えてきた「社会性昆虫」の意外な実態。同じように社会を作って生活している人間と比較してみるのも一興です。人間にも“働き者”と“怠け者”とが存在するが,これには進化論的にどのような意味があるのか,などと‥‥。

      もちろん,気の遠くなるような時間をかけて機能性を追求してきた結果つくられた社会性昆虫の生態と,人間社会とでは,単純に比較はできません。しかし,ひとつ確実に言えることは,長期的に見て「余力・無駄・遊びのある組織・社会の方が間違いなく強い」ということ。人間世界の政治・経済,企業経営を考える上でも,確固とした真理であることには疑問の余地がないでしょう。

      こうしてみてくると「生物進化の本質」とは,個々には非効率にみえても,大きな流れから全体をみれば,その集団の生き残りにとって極めて“合理的な選択の積み重ね”であることが,改めてよく理解できました。






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